ギャラリーシュタイネでは、作家から寄せられたコメントを館内に掲示して、みなさまをご案内しています。その一部をご紹介します。
kuralica 石井 希 Nozomi Ishii
「ペーパーからくり作家が何故アクセサリーを?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
私もはじめはそう思いました。からくりもアクセサリーも、どちらにもきっと、驚きと笑顔を引き出す魔法のような力があるように思えて、そこが同じであれば、私にもできるような気がしたのです。
アクセサリーを着けるときの、あの密やかな高揚感。着けた瞬間、人もアクセサリーも、魔法がかかったみたいに輝き出す。はじめてアクセサリーを展示したとき、鏡の前で瞳を輝かせながら、どれにしようかと迷っているみんなの笑顔が眩いほどに美しく、私はその光景をずっとずっと忘れずにいたい、この先もずっと見ていたいと思いました。それは、からくりに触れた人たちの驚いた笑顔を見たときと同じ気持ちでした。
本来の役目を終え、朽ちゆくものに宿る魅力を拾い上げ、また新たな道具として仕立てあげるという行為。真鍮、銅、アルミ、ブリキ、絹など・・・さまざまな素材に触れました。
はじめて目にする屑硝子。それは解けはじめた雪がまた凍ってしまったような、弾ける雫を瞬間で固めたような、煌く朝露を閉じ込めたような。そんな、触れると消えて無くなってしまう、美しく儚いものたちが、この手に残る形と成って目の前に現れたような、まるで魔法にかかったような、不思議な感覚でした。
色も模様も様々で、まさに魔女を想わせるような妖艶なガラス。ガラス特有の艶やかで深みのある色彩。その感動的な美しさを損なわぬよう、一番いい形で身に纏えるよう、大切にしたてました。
陶器をつくる工程で出る端材に、辰砂という釉薬をかけて焼いてもらったもの。意図せずうまれた形と、焼き上がるまでどう出るかわからない色の魅力。珊瑚や貝殻の如く、海の欠片のような白やピンク。妖しげな雰囲気の紫は、海の魔女を想わせます。
大胆だけれど繊細で、着けるとしっくり、魔法のようにその人になじむ。
ふわり ひらりと 軽やかで、耳元や胸元で揺れる度、光を受けてキラリと輝く。
アクセサリーには、美しさを引き出す魔力がある。
ペーパーからくりとアクセサリー。
まったく異なる二世界ですが、どちらも同じような魔力を持っています。私はそれらを使って魔法をかけているようでいて、実は一番その魔法にかけられているのは、私自身なのかもしれません。
魔法の屑硝子 小澄正雄 花岡 央
魔女の陶欠片 内田好美