小川由利子は、さいたま市に工房「 knut ceramic studio 」を構え、
伝統的な「染付」という技法で
陶磁器の花器やテーブルウェアー、オブジェなどを制作しています。
作品をご覧になられた方々からは、
「どこか昭和を懐かしく感じさせる」「絵柄のデザインがかわいい」
「オブジェがユニークだ」などなど、多くの明朗な感想をいただいています。
「染付」とは、
白地に呉須(ごす)と呼ばれる藍色の顔料で紋様を描き、
透明の釉薬をかけた陶磁器です。
元の時代(14世紀)、中国の景徳鎮で盛んに焼かれた染付は、
江戸時代初期(17世紀)になって、朝鮮から日本へと伝わります。
中国で生まれ、日本へ伝わった染付は、
新たに肥前陶磁「伊万里焼」として、日本独自の姿に生まれ変わり、
1867年、その伊万里焼はパリ万国博覧会で脚光を浴び、
世界中で愛される焼き物へと変貌を遂げて行きます。
小川由利子は、美術大学、大学院で学び、染付の、
「美しさの中にある愛らしさ、生活空間にも馴染む青」に魅了され、
制作を開始します。
こだわりの呉須のブルーは、
自らの手により、マンガン・コバルト・長石・石灰を調合して作る、
古来、伊万里から伝わる本物の青。
それは深く落ち着いた自然な藍色で、
濃淡は、その時々により様々な表情に変化します。
「伝統を大切に、今を生きる染付を作りたい」という小川由利子の思いは、
祖父母が暮らした時代の風物、日本の風景、人々の営みなどをモチーフに、
微笑ましいオブジェや器となって、人々の前にこうして姿を現します。
先人が築き上げてきた染付の技と文化を受け継ぎ、
現代「ニッポン」の染付という新しいカテゴリーを提案する染付陶磁の作品は、
どなたにも愉しく、微笑ましくご覧いただけると思います。
※染付の器類、花器、オブジェなど、約150点を展示販売。入館無料。
※呉須・・・コバルト化合物で、染付磁器に紋様を描く、藍色の顔料。
※文中では作家の敬称は略しています。