作品への思いの2回目は、「ちいさいいえ」と「手紙」をご紹介します。松原幸子の作品のモチーフは、地図を眺め心を躍らせた空想旅行、読み耽ったたくさんの本の世界。偉人たちの著書に感じ、往復書簡を空想し、美意識の探究は続きます。
「ちいさいいえ」
子供の頃、社会の「時間」が好きでした。
「授業」がではありません。
授業はあまり聞いていなかったと思います。
というか聞いていた記憶があまりありません。
その「時間」の間はずっと、
地図帳ばかりこっそりと見ていました。
地図帳を見ながら、世界のどこかの国の、どこかの田舎の、
名の知らないだれかの一日を想像していました。
いつの頃からこんな癖がついたのかはわかりませんが、
そのきっかけはなんとなくわかります。
家の本棚には安野光雅さんの「旅の絵本」がありました。
天気の悪い日は、家の中でそれをずっと眺めていました。
毎日飽きもせずに。
「旅の絵本」がとても好きだったから、
空想の旅をし、物語が生まれて、
「ちいさいいえ」が生まれました。
「手紙」
何かを見て美しいと感じる、
その美意識はどこから生まれたのか。
人は決して生まれながらに美意識をもっているのではない。
美の基準は国や時代により異なる。
文化など何かを共有し合う中で、
美というものへの共通認識は生まれる。
しかし、それらは個々の美意識というものとは
少し異なるのではないだろうか。
一個人の美意識というものは、
その人が生まれ成長する中で出会った、
一つ一つの事柄から形成されていく。
そうして生まれた美意識は、
やがて別の誰かの美意識を作り出すひとつの要素となる。
人がなにかを「美しい」と感じた時、
そこには長い時を経た様々な人々の美意識が存在する。
決してゼロから自己が作り上げたものではない。
そうやって生み出された私の美意識から
少しずつ作品が作り出されるのだ。
私の作品を作り出した人々への時代も国も越えた手紙。
「ごがつのそら」は、5月19日(日)まで開催しています。
10:00~17:00 開館、木曜休館(5/2は開館)。
作家在廊日 5/3~5/5 会期中の土曜と日曜
展示作品は販売しています。入館は無料です。
ギャラリーシュタイネ
〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明7360-17
tel/fax 0263-83-5164
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